「基本情報、範囲が広すぎて、どこまでカードにしたか分からなくなる」。私も同じところで手が止まりました。

先に結論を言うと、出題範囲を全部カードにするなら、基準にするのは参考書の目次ではなく試験の分野表です。参考書の章立ては著者が教える順なので、試験の分野とは1対1にならないからです。

間違えた問題をスクリーンショットで切り抜いて単語帳のカードに貼る、というやり方から始めたのですが、出題範囲を丸ごとカードにすると決めた途端、進み具合を数える手段がなくなりました。この記事では、分野表を先に作って教材の各節を対応づける手順と、残りが見える状態で少しずつ足していく運用を、実際の枚数つきで見ていきます。

基本情報の暗記に、Ankiはどこまで効くのか

基本情報技術者試験は、科目Aと科目Bの2つに分かれています。

科目A科目B
試験時間90分100分
出題形式多肢選択式(四肢択一)多肢選択式
出題数/解答数60問/60問20問/20問
出題内訳情報セキュリティ 4問/アルゴリズムとプログラミング 16問
合格基準科目評価点 600点以上/1,000点満点科目評価点 600点以上/1,000点満点

2つは同じ日に受けて、あいだに最長10分の休憩を取れます。どちらの科目も600点以上を取らないと合格にならないので、科目Bを捨てるという選択肢はありません(2026年8月2日にIPAのサイトとパンフレットで確認)。

科目Aは知識を問う小問が中心です。科目Bは擬似言語で書かれたプログラムを読んで追っていく問題が中心です。擬似言語というのは、試験のために作られた、日本語まじりのプログラムの書き方です。実際に動かせる言語ではありませんが、順次・選択・繰返しといった組み立ての考え方はどのプログラミング言語とも共通していて、擬似言語だけのものは「←」で値を入れるといった記号や呼び名のほうです。

単語帳のカードが効くのは、科目Aのほうです。「知っているか、いないか」で決まる問いは、時間をあけて何度も出し直すと定着しやすくなります。一方、手順を1行ずつ追う問題は、机に向かって書き出さないと解けるようになりません。私の場合は、カードの大半が科目Aです。科目Bもゼロではありませんが、覚えれば済むところだけを抜き出しているので、その線引きは後半のよくある質問にまとめました。

たとえるなら、単語帳は「答えを知っているか」を確かめる道具です。料理でいえば、材料や道具の名前を覚えるのには向いていますが、包丁の使い方は実際に手を動かさないと身につきません。

粒度が伝わりにくいので、私が実際に使っているカードを2枚だけ出します。

分野表(問い)裏(答え)
基礎理論16進数の1桁は、2進数で何桁(何ビット)分に相当するか。4桁(4ビット)。16 = 2の4乗だから
セキュリティコンピュータウイルスが持つ代表的な三つの機能を答えよ。自己感染機能/潜伏機能/発病機能

どちらも「思い出せるか」だけを聞いています。この粒度なら、通勤中にスマホで数十枚めくれます。

出題範囲そのものは、IPA(情報処理推進機構)が試験要綱という文書で公開しています。そして、それをさらに細かくしたシラバスも公開されています。シラバスは、試験を作る側が「ここから出す」と示している一覧のことです。基本情報技術者試験のシラバスは Ver.9.2 が最新でした(2026年8月2日に確認)。どちらも IPA のサイトから、誰でも無料で PDF をダウンロードできます。

シラバスの分類は2段になっています。大きいくくりが大分類(「技術要素」など9個)、その中の細かいくくりが中分類(「データベース」「ネットワーク」「セキュリティ」など23個)です。この記事で「分野」と呼ぶのは、下の段の中分類のほうです。IPA 自身は「テクノロジ系・マネジメント系・ストラテジ系」という一番大きいくくりを「分野」と呼んでいるので、そこだけ読み替えてください。

なお、なぜ時間をあけて復習すると忘れにくいのか、という記憶の仕組みはこの記事では扱いません。間違えた問題はいつ解き直す? 回数と順番にまとめてあります。資格試験で何をカードにするかという一般的な線引きも、Anki 資格勉強のコツ 何をカードにするかに書きました。ここから先は、基本情報にしぼった話をします。

「全部やる」と決めた瞬間に、目次では足りなくなる

私がAIでカードを作り始めたきっかけは、大げさなものではありませんでした。自分がまだ理解できていない分野を、試しに数枚だけカードにしてもらったところ、これがうまくいきました。ただ、たまに一般的な用語解説がそのままカードになって出てくることがあったので、参考書のデータを渡して、それを参考に作ってもらうようにしました。この「教材を渡さないと一般論のカードになる」という話は暗記カードをAIで自動生成する方法ChatGPTで暗記カードを作る手順に詳しく書いたので、そちらに譲ります。

うまく作れると分かったので欲が出て、数枚ずつではなく、出題範囲を丸ごとカードにしてしまおうと考えました。ところが、丸ごとやると決めた瞬間に「どこまで作ったか」を数える必要が出てきます。数枚なら覚えていられますが、範囲全体は記憶では追えません。

最初は参考書の目次で数えようとしました。第1章が終わったから次は第2章、という具合です。でも、これはうまくいきませんでした。参考書の章立てと、試験の分野が1対1になっていないからです。

実例を1つ挙げます。私が使っているのは『かやのき先生の基本情報技術者教室』(技術評論社)、いわゆる「かやのき本」です。この本の第1章は「コンピュータ構成要素」という章ですが、その中の最初の節「情報の表現」だけは、試験の分野でいうと基礎理論に入ります。同じ章の中で分野が割れているわけです。章を1つ終えても、試験の分野が1つ埋まったことにはなりません。

これは、やってみて分かったことです。最初から章立てのズレを見越していたわけではなく、数えようとして初めて気づきました。

たとえるなら、参考書の目次と試験の分野表は、目的が違う2枚の地図です。参考書の章立ては著者が教えやすい順に引いた道で、試験の分野は出題する側が引いた区切りです。どちらも正しいのですが、重ねても線は一致しません。

分野表の作り方(AIに手伝わせる手順)

作るのは、23行×2列の表です。表計算ソフト(Excel でも Google スプレッドシートでも構いません)に作ります。手順は以下の6つです。

  1. IPA のサイトからシラバスの PDF をダウンロードする
  2. 中分類23個を、表計算ソフトに23行で書き出す
  3. 教材の目次をAIに渡して、章と節の一覧を作らせる
  4. 節の数が目次と合っているか、自分で数える
  5. 各節がどの分野にあたるかを、AIに対応づけさせる
  6. 対応づけた結果を表に貼り、終わった節に「済」を入れていく

3つ目でAIに渡すのは、目次だけです。本文は要りません。電子版が付いてくる教材なら、その PDF をそのまま渡せます。紙の参考書しか無い場合は、目次のページを写真に撮って渡すか、章と節の見出しだけを打ち込めば同じことができます。PDF や画像を読めるチャットAI(ChatGPT・Gemini・NotebookLM など)なら、どれでも構いません。

頼み方は、2段階に分けます。いきなり「分野に振り分けて」と頼むと節が抜けるので、先に一覧だけを作らせます。

  • 1回目:「この目次から、章と節の一覧を作ってください。番号と見出しだけで構いません」
  • 2回目:「さきほどの節の一覧に、次の分野一覧のどれにあたるかを1つずつ対応づけてください。どちらとも取れる節は、主な分野を1つ選んだうえで、迷った理由を備考に書いてください」

分けて頼むのは、AIに一度に2つの判断をさせないためです。節を拾う作業と、分野を割り当てる作業は別物なので、混ぜると節の抜けに気づけなくなります。だから4つ目の検算を挟みます。私が使っている教材は全12章85節なので、一覧が85行になっていなければどこかが抜けている、と分かります。ここだけは自分で数えてください。

6つ目まで終わると、この対応表は進み具合の台帳になります。台帳というのは、どこまで終わって、どこが残っているかを記録しておく表のことです。

副産物もあります。教材の側が薄い分野が、作り始める前に見えます。私の場合、この時点で2つ引っかかりました。ハードウェア(論理回路など)には、参考書で1つの節しか割かれていません。システム企画(システムを発注する前の企画や提案の話)にいたっては独立した節がなく、別の章の一部に含まれているだけでした。

参考書だけを進めても、この2つは薄いまま残ります。ここは演習側で拾うつもりでいます。ただ、正直に書くと、まだ手をつけていません。いまは参考書の範囲をカードにしている途中で、そのあとの作業として置いてある状態です。

台帳があるから、全部まとめて作らなくていい

先に誤解を避けておきます。「範囲は全部やる」と決めることと、「全部まとめて作る」ことは別です。私がやっているのは前者だけで、作る作業のほうは単元ごとに小分けにしています。カードを作るだけ作って復習に手が回らなくなる失敗については、AIで暗記カードを作る全体像に書いたとおりです。

小分けにできる理由は、出題側にペースがあるからです。私の場合は、1日に出題される新しいカードの枚数を20枚に設定しています。これは「1日20枚作る」という目標ではなく、「1日に20枚までしか新しいカードは出てこない」という上限です。この上限がある限り、先に何百枚作っておいても、出てくる速さは変わりません。

むしろ、まとめて作ると損をします。まだ読んでいない範囲まで先に作ると、自分がどこでつまずいたかを知らないまま、AIの言葉のままカードになります。節を読んだ直後に作れば、引っかかったところをそのままカードにできます。出てくる枚数が同じなら、後者のほうが中身は良くなります。

だから私の場合は、参考書の節を1つ終えるごとにカードを足しています。残りが数えられるので、今日まとめて作らなくても不安になりません。

実際の数字を出します。私はAnkiで始めて、いまは自分で開発している学習アプリのほうに移して続けています。以下は、そちらで実際に数えた2026年8月2日時点の数字です。

項目
作ったカードの合計599枚
手をつけた分野23分野のうち16分野

0枚のまま残っている7分野は、プロジェクトマネジメントやサービスマネジメント、経営戦略マネジメントなどです。マネジメント系とストラテジ系がまとめて残っている、という状態です。

ここで、最初に作った分野表が効いてきます。作り始める前に「教材が薄い」と分かっていた2つの分野は、599枚まで来たいまも薄いままです。次の表は23分野から4つを抜き出したものです。

分野作ったカード
基礎理論102枚
セキュリティ97枚
ハードウェア(論理回路など)4枚
システム企画6枚

これは、私の予測が上手だったという話ではありません。参考書から作っているのだから、参考書が薄い分野のカードが薄くなるのは当たり前です。効いたのは気づいた時点の早さでした。分野表がなければ、599枚作り終えてから「ハードウェアが4枚しかない」と気づいていたはずです。作る前に分かっていたので、そこは演習で拾う前提を置いたまま参考書を進められました。

作るのは楽になっても、毎日の復習は軽くならない

正直に書いておくと、この記事を書いている時点で、私のデッキには出番待ちのカードが121枚たまっていました。ただし、この121枚は中身が2種類あります。復習の期限が本当に来ているのが28枚で、残りの93枚はまだ一度も出していない新規カードです。93枚のほうは1日20枚の上限で順番待ちをしているだけなので、溜まって見えても1日に来る量が増えたわけではありません。重いのは、28枚の側とその積み上がりです。

直近の24時間で私が解いたカードは154枚でした。これを回せているのは、いま学習に時間を割ける環境にいるからにすぎません。会社勤めをしながらなら、気合いを入れれば平日にギリギリ回せる、という感じの分量だと思います。作る工程が軽くなることと、毎日回す負担が軽くなることは、別の話です。

もうひとつ正直に書いておくと、私はまだ受験していません。なので「この方法で受かった」とは書けません。書けるのは、範囲を丸ごとカードにする作業が止まらなくなったところまでです。

溜まったカードをどう捌くかは、それだけで別の記事になります。Ankiに挫折する理由と続けるコツにまとめたので、いま溜めている方はそちらを読んでください。

作ったカードを、アプリに入れる

読者の方がすぐ使える道は1つです。チャットのAI(ChatGPT等)にカードを作らせて、CSV(表を持ち運ぶための形式)で受け取り、暗記アプリに読み込ませます。手順はAnkiデッキの作り方|3ステップと続けるコツにあります。

私自身は、AIが作ったカードをそのままアプリへ流し込む仕組みを組んでいます。ただしこれは私が自分のパソコンで動かしている個人的な自動化の話であって、私が開発しているえびデッキの機能ではありません。組み方はClaude Codeで単語帳を自律生成する方法にありますが、パソコンで動かす開発者向けの道具を使う話なので、まずは CSV で十分です。

どちらの道でも、分野表の話は変わりません。入れ方より先に、何をどの順で作るかが決まっている必要があります。

よくある質問

科目BもAnkiでカードにすべきですか?

全部をカードにするのは向きませんが、覚えれば済むところだけを抜き出してカードにしています。科目Bは擬似言語で書かれたプログラムを読んで変数の値を1行ずつ追っていく問題が中心なので、答えを丸ごと覚えても、次に別のプログラムが出れば同じ作業をやり直すことになります。追う練習そのものは、過去問を解く時間にあてたほうが早いです。

それでも、覚えていれば済む部分は残ります。私のデッキでは、599枚のうち科目Bのカードが18枚あり、中身は2種類に分かれました。

種類枚数例(表)例(裏)
記法・構造の名前7枚前判定繰返しと後判定繰返しで、繰返し本体が必ず1回は実行されるのはどちらか。後判定繰返し。前判定繰返しは、最初の条件判定が偽なら1回も実行されない
答えが一意に決まる最小のトレース11枚配列 [4, 1, 3, 2] を基本交換法で昇順に整列する。1回目の走査が終わった直後の配列と、その時点で確定する値を答えよ。配列: [1, 3, 2, 4]/確定する値: 4

下の種類は、本文で「手順を1行ずつ追う問題は、机に向かって書き出さないと解けるようになりません」と書いたのと矛盾して見えるかもしれません。違いは規模です。本番の科目Bは長いプログラム全体を追いますが、カードにしているのは配列が4要素で1回の走査だけ、という最小の例です。型を覚えるためのものであって、解けるようになるためのものではありません。

分野表は自分で作らないとダメですか? シラバスをそのまま使えばよいのでは?

分野の一覧は、シラバスをそのまま使って構いません。手を動かす必要があるのは、そこから先です。

手元の教材の各節が、どの分野にあたるかを対応づける部分は、教材ごとに違うので自分で作ることになります。そして、台帳になるのはこの対応づけのほうです。分野の一覧を眺めているだけでは、どこまで終わったかは数えられません。逆に言えば、対応づけさえ済ませれば、あとは節を1つ終えるごとに「済」を入れるだけで進捗が見えます。

途中でシラバスが変わったら、作ったカードは作り直しですか?

いま作るのは無駄になりません。シラバス本体にも「なお,本シラバスは,技術動向などを踏まえて,内容の追加,変更,削除など,適宜見直しを行っていきますので,あらかじめご承知おきください。」と書かれていて、実際に改訂されています。ただ、改訂で変わるのは追加・削除された項目のまわりです。スループットやRAIDの意味が丸ごと入れ替わるわけではありません。

分野表は、ここでも役に立ちます。変わるのは分野の区切り方なので、改訂の差分を分野表に当てれば、影響を受ける分野だけを見に行けます。カードはそのまま引き継げます。なお、2027年度から新しい試験制度が始まる予定で、基本情報のシラバス案は準備中と告知されています(2026年8月2日確認)。案の内容は変わる可能性があるとも書かれているので、確定してから分野表を見直すことになります。

まとめ

基本情報のカード作りでつまずくのは、たいてい「作り方」ではなく「どこまで作ったか分からなくなること」です。数枚のうちは問題になりませんが、出題範囲を丸ごとやると決めた瞬間に効いてきます。

  • 参考書の目次ではなく、試験の分野表を基準にする
  • 教材の各節を分野に対応づけると、それがそのまま進み具合の台帳になる
  • 台帳があると残りが見えるので、まとめて作らずに単元ごとに足していける
  • ただし、作る側が楽になっても、毎日復習する負担はそのまま残る

今日やることは1つだけで足ります。IPA のサイトからシラバスを開いて、中分類23個を表計算ソフトに書き写す。ここまでで15分ほどです。教材の対応づけは、次に机に向かったときで間に合います。

なお、ここで書いたのは暗記の部分だけです。過去問演習や参考書での理解と組み合わせて使う前提で読んでください。暗記カードだけで合格できる試験ではありません。

次に読むなら、記憶の仕組みそのものが気になる方は忘却曲線の読み方 覚えたことは本当に消えるのかへどうぞ。すでに溜めてしまった方はAnkiに挫折する理由と続けるコツが近いはずです。