間違えた問題、もう一度やったほうがいいのは分かっているけれど、いつ、何回やればいいのか。結論から言うと、間隔をあけて、最低3回が目安です。当日か翌日に1回、3日から1週間後にもう1回、2週間から1か月後にもう1回。
ただ、この日付を守ることが本質ではありません。大事なのは「どれを解き直すか」と「いつ解き直すか」という2つの軸です。私を含め、多くの人は「どれを」だけで回していて、「いつ」が抜けています。そうすると、参考書を読んだ直後についた「○」(正解した問題)ばかりが積み上がって、本番で解けません。この記事では、印の付け方から、間隔の管理を自分でしなくて済ませる方法までを順に説明します。
間違えた問題はいつ解き直す? 目安は「間隔をあけて3回」
まず具体的な間隔から示します。
| 回 | タイミング | ねらい |
|---|---|---|
| 1回目 | 解いた当日〜翌日 | 解説を読んで分かったことを、何も見ずに再現できるか確かめる |
| 2回目 | 3日〜1週間後 | 忘れかけたころに、もう一度引き出す |
| 3回目 | 2週間〜1か月後 | 長い間隔をあけても残っているかを確かめる |
日付はあくまで目安です。1日ずれても2日ずれても構いません。仕事や学校の予定で飛ばしてしまった日があっても、そこで崩れたと考えなくて大丈夫です。大事なのは、1日でまとめて済ませずに、間隔をあけて3回に分けることのほうだからです。
ひとつ正直に書いておくと、上の表のようにだんだん間隔を広げていくのは、私が運用しやすいから続けている作法です。一定の間隔で回す方式と比べてどちらが有利かは、研究上まだ決着がついていません。効果がはっきりしているのは「間隔をあけること」までで、「広げること」ではない、という区別だけ頭の隅に置いておいてください。
ただ、この表を手帳に書き写すだけでは、たぶん続きません。私がそうでした。カギは、次に説明する「どれを解き直すか」のほうにあります。
まず「どれを解き直すか」を分ける — ○×だけだと取りこぼす
私の場合は、演習問題や過去問に印をつけて、解けなかった問題と苦手な問題を重点的に回していました。やり方そのものはよくあるものです。工夫したのは、印を3種類にしたところでした。
- × … 間違えた
- △ … 正解したけれど、理解があやしい
- ○ … 正解した
ここで大事なのは、まん中の△をつくることです。○と×の2つだけで分けると、まぐれ当たりや、選択肢を消去法で絞って当たっただけの問題まで、ぜんぶ○に入ってしまいます。そして○に入った問題は、二度と解き直されません。
テストの自己採点で「マルかバツか」しか書かないのと同じです。当たったけれど自信はなかった問題が、どちらの山にも入らないまま消えてしまいます。
△をつける基準は、厳しめでちょうどいいと思っています。「人に説明できるか」を自分に聞いて、少しでも詰まったら△にする。正解したかどうかではなく、理由まで言えるかどうかで分ける、ということです。
なお、間違いを「ケアレスミス」「思い出せなかった」「まったく歯が立たなかった」というように、原因で分ける方法もあります。原因が分かれば対策も変わるので、こちらも有効です。ただ、解いている最中に原因まで分類しようとすると手が止まりがちなので、私の場合はまず「どれくらい自信があるか」の3段階で印をつけて、原因の掘り下げはノートのほうに回していました。誤答をノートにまとめる手順は「間違いノートの作り方」に、弱点を絞り込む形にする方法は「復習ノートの作り方」にまとめています。
「全部○にする」だけでは足りない — ○は剥がれる
印をつけたあと、私がやっていたのはシンプルな運用でした。とにかくまず1周する。そのあと×と△を解き直す。それを繰り返して、最後は全部○にする。 そういうイメージです。
○が増えていくのは気持ちがいいですし、前に進んでいる感じもします。ただ、思ったとおりにはなりませんでした。
一度○になった問題も、しばらく間隔をあけてから解いてみると、解けないことがあったのです。
なぜそうなったのか。振り返ってみると、○がついたのは、たいてい参考書の該当ページを読んで理解した直後でした。読んで納得して、その勢いのまま解いたから解けた。それを私は「できるようになった」と記録していたわけです。
これは「できるつもりの錯覚」と呼ばれています。勉強しているときは目の前に答えがあるのに、本番に答えはない。この差が、自分の手応えを実際より大きく見せます(Koriat & Bjork, 2005)。ただし、この実験は単語のペアを覚える課題で行われたもので、資格試験の演習にそのまま当てはまる保証まではありません。「読んだ直後の手応えは当てにしない」という向きの話として受け取ってください。
そのうえで、勉強法そのものを効果の高さで比べた研究では、教科書などを読み返すやり方は効果が薄く、問題を解いて思い出す練習のほうが効果が高いと評価されています(Dunlosky et al., 2013)。こちらは学校での学習も対象に含めた比較です。読んで分かることと、何も見ずに解けることは、どうやら別の能力らしい、ということです。
たとえるなら、読んだ直後の○は、教科書を閉じた5秒後に受けるテストのようなものです。点は取れますが、それが明日の自分に残っているかは分かりません。
ここから導かれる対策はひとつです。○にも期限を入れる。○は「覚えた」の証明ではなく、「その時点ではできた」という記録にすぎない、と扱いを変えます。具体的な回し方は、そのしくみを一度おさえたあとで説明します(次の次の見出しです)。
なぜ間隔をあけると忘れにくいのか
ここで少しだけ、記憶の側の話に触れておきます。
人の記憶は、覚えた直後から落ちていきます。100年以上前に自分自身を相手に実験して確かめた研究者がいて、近年も同じ傾向が確認されています(Murre & Dros, 2015)。よく見かける「何時間後に何%忘れる」といった数字は、元の実験も近年の確認も、調べた相手がたった1人です。細かい数値まで真に受ける必要はありません。押さえておきたいのは「時間が経てば忘れる」という分かりやすい現実だけです。その数字が実際には何を測ったものなのか、ほかの人で測ったらどうだったのかは、忘却曲線の読み方にまとめました。
そのうえで、対策としてはっきりしているのが、間隔をあけて復習するという方法です。まとめて復習した場合と、間隔をあけて復習した場合を比べた研究のまとめを見ると、結論ははっきりしています。同じ合計時間を使うなら、一度にまとめて復習するより、間隔をあけて分けたほうが、あとまで残りやすい。そういう傾向が報告されています(Cepeda et al., 2006)。
感覚的にも納得しやすいところだと思います。すらすら解けるうちに何度解いても、思い出す負荷はほとんどかかりません。少し忘れかけて、思い出すのに時間がかかるくらいのタイミングで引き出すほうが、記憶には効きやすいと考えられています。だから間隔をあけるわけです。
印ごとに解き直す間隔を変える
さて、ここまでで「どれを」(印の3段階)と「いつ」(間隔をあける)が揃いました。この2つをつなぐのが、実際の回し方です。
間隔の数字は、最初の表と同じで構いません。違うのは、全員が同じ3回を回るのではなく、印によってどこから始めるかが変わるという点です。
| 印 | 解き直す間隔 | 次にどうなるか |
|---|---|---|
| × | 当日か翌日 → 3日後 → 1週間後 | 解けたら△へ |
| △ | 3日〜1週間後に1回 | 解けたら○へ |
| ○ | 2週間〜1か月後に1回 | 解けなければ△へ戻す |
ルールはひとつです。解けたらひとつ上、解けなかったらひとつ下。
ポイントは、○から下に戻る矢印があるところです。印が上がる一方だと、記録と実力がだんだんズレていきます。
なお、×から始まる問題は、この昇格をたどると結果的に4回、5回と解くことになります。冒頭に書いた「3回」は、最初から○がついた問題の最低ラインだと思ってください。
もうひとつ、よくあるやり方の落とし穴にも触れておきます。「1周ぜんぶ終わってから2周目に入る」という周回単位の進め方です。分かりやすいのですが、問題集が厚いほど、1周目の序盤で間違えた×が、次に解かれるまで何週間も放置されることになります。いちばん復習が必要な問題が、いちばん長く放置されるわけです。
洗濯物にたとえると、全部たまるまで干さないか、乾いたものから畳んでいくか、の違いに近いと思います。周回で回すこと自体は悪くないので、×だけは周回とは別に、短い周期で拾うようにすると、この問題は小さくできます。
自分でタイミングを決めると、たいてい続かない
ここまで書いておいて何ですが、正直に言うと、私が最初にやっていたのは、この「いつ」がすっぽり抜けた形でした。だからこそ、どこで破れるかは体で知っています。
印はつけていました。×と△を重点的に回してもいました。でも、解いた日は記録していませんでした。工夫したのは印の種類だけで、あえて間隔をあけるという発想そのものがなかったのです。
続かない理由は、あとから考えると3つありました。
1つ目は、記録がないと間隔が測れないことです。 「この問題を最後に解いたのはいつか」が分からなければ、そもそも「そろそろ2週間経った」という判断ができません。印は「どれを」を教えてくれますが、「いつ」は教えてくれないのです。
2つ目は、不安に駆られて戻るタイミングが早すぎてしまうことです。 忘れるのが怖いので、まだ覚えているうちに何度も解いてしまう。ところが、まだすらすら解ける段階で戻っても、記憶にはあまり効きません。手応えだけが増えて、実力は増えないという、いちばんもったいない時間の使い方になります。
3つ目は、範囲が広いと対象が爆発することです。 資格試験のように出題範囲が広いと、解き直す対象は数百問の規模になることもあります。それを日付つきで管理しようとすると、管理そのものが一日の作業になってしまいます。
このあたりは、単語帳アプリで復習が溜まって続かなくなる現象とよく似ています。同じ悩みで挫折した話は、単語帳アプリ Anki の例で「Ankiに挫折する理由と続けるコツ」に書きました。
要するに、間隔の管理は、気合いや意志の問題ではありません。記録がなければ判断できないという、情報の問題です。
解き直しの管理を記録にまかせる
では、どうするか。私がたどり着いた答えは、その日の気分で決めるのをやめて、記録を見て決めるというものでした。
一歩目は「解いた日と印を残す」だけ
最初の一歩は拍子抜けするほど単純です。問題番号と、解いた日と、その日の印を、あとから並べ替えられる形で残す。これだけです。
| 問題 | 日付 | 印 |
|---|---|---|
| 第3章 問12 | 7/10 | × |
| 第3章 問15 | 7/10 | △ |
| 第2章 問4 | 7/8 | ○ |
道具は何でも構いません。選ぶ基準はひとつで、すでに毎日開いているアプリかどうかです。新しくアプリを入れると、その時点で手間がひとつ増えて続きません。表計算ソフト(ExcelやGoogleスプレッドシート)でも、スマホの標準メモでも、普段使っているノートアプリ(NotionやObsidianなど)でも大丈夫です。
紙の問題集に印をつけるだけだと、その印が「いつついたのか」が残りません。日付を足すだけで、「2週間以上ふれていない○」を後から拾えるようになります。これが、抜けていた「いつ」の軸を取り戻す最小の手当てです。
記録が溜まると「次に解く1問」が決まる
1週間ぶんも溜まれば、日付の古い順に並べ替えるだけで、いちばん長くふれていない問題が上に来ます。あとは上から順に、印に応じて解き直すだけです。
そうすると、机に向かってから「今日は何をやろう」と考える時間がなくなります。私の場合は、この「毎回考えなくてよくなった」ことのほうが、記録そのものより効きました。この記録をAIに読ませて、今日解き直すぶんを選んでもらう形も試していますが、これは記録が先にあって初めて成り立つ話です。AIを使った学習の進め方については「AIで暗記する方法」で全体像をまとめています。
暗記もので解けるものは、単語帳アプリに任せる
ここまで手で組んできた仕組みを、最初から持っているのがAnkiなどの単語帳アプリです。「間隔反復」(かんかくはんぷく)と呼ばれる仕組みで、一度覚えたものを、今日・数日後・数週間後と間隔をあけながら自動で出し直してくれます。正解・不正解も記録してくれるので、暗記で解ける知識について、自分で日付を管理する理由はあまりありません。
一方で、計算や記述のように、実際に手を動かして解く問題は単語帳には向きません。この場合は、前の節で作った「解いた日+印」の記録がそのまま答えになります。 暗記で解けるものは単語帳アプリに、手を動かすものは自分の記録に。この2本立てが現実的だと思います。
教材から単語帳のカードを用意する手順は「暗記カードをAIで自動生成する方法」にまとめています。もう少し先の話として、AIに記録を読ませて今日やるぶんを選んでもらうやり方に興味があれば「Claude Codeで暗記・学習を効率化する使い方」もどうぞ(こちらは少し慣れた人向けの内容です)。
正直に言えば、私もまだ完璧な形にはたどり着いていません。単語帳は単語帳、演習の記録は別のアプリ、という状態が続いています。この分断をどうまとめるかは、いま私が開発しているアプリで実現したいと考えている構想の段階です。ひとまずは「演習の記録は1か所にまとめる」だけでも、次に解く1問は決まります。
なお、こうした記録は、予備校の講座や市販の問題集、いま使っているアプリと併用して構いません。むしろ、すでにある教材の解き直しを漏らさないための道具として使うのが、いちばん無理がないと思います。
よくある質問
印は必ず3種類じゃないとダメですか?
2種類でも構いません。 続けられる形が一番です。
ただ、○×の2つで回すなら、○のほうに日付をつけて、後から見返せるようにしてください。この記事で伝えたいことの半分は「○を放置しない」なので、そこだけ残せば形は自由です。逆に、印を4段階、5段階と細かくするのはおすすめしません。解いている最中に迷って手が止まります。
間違えた問題は何回くらい解き直せばいいですか?
最低3回を目安にしています。ただし、これは私が落ち着いた運用ルールで、研究で「3回」と決まっているわけではありません。
印によっても変わります。×をつけた問題は、解けるようになるまで短い間隔で戻ってくるので、結果的に4回、5回と解くことになります。逆に、最初から○がついていて、1か月後の確認でも解けた問題は、そこで一度切り上げて構いません。
解き直しは同じ日にまとめてやってもいいですか?
その日のうちに1回、何も見ずに解いてみるのは意味があります。 解説を読んで分かったつもりになっていないかを、その場で確かめられるからです。
ただし、それは「記憶を強くするため」というより「理解を確認するため」です。同じ日に3回繰り返すより、当日・3日後・2週間後に1回ずつ解くほうが向いています。同じ合計時間なら間隔をあけたほうが後まで残りやすい、という傾向が報告されています(Cepeda et al., 2006)。
全部を解き直す時間がないときはどうすればいいですか?
×から先に、次に△、○は期限が来たものだけ、の順で切ります。
社会人の資格勉強だと、平日にまとまった時間を取れない日のほうが多いと思います。そういう日は「今日は×だけ5問」と決めて、△と○は翌日以降に送る。全部を毎日回そうとすると、達成できない日が続いて、そのうち開かなくなります。私の場合はそれで一度離脱したので、先に切る基準を決めておくほうが結局は続きました。
解説を読んで理解できたら、解き直さなくていいですか?
解き直したほうがいいです。 ここを飛ばすと、あとでいちばん痛い目を見ます。
解説を読んで理解できた状態は、目の前に答えがある状態です。本番にその答えはありません。読んで分かることと、何も見ずに解けることは別で、この差が「できるつもりの錯覚」と呼ばれる状態につながります(Koriat & Bjork, 2005)。理解できた直後こそ、何も見ずに一度解いてみる。そこで詰まるなら、まだ○ではありません。
まとめ
間違えた問題の解き直しは、2つの軸で決まります。
- どれを解き直すか … ○×の2つではなく、△(正解したけれど理解があやしい)を足して3段階にする。まぐれ当たりを○に混ぜない
- いつ解き直すか … 1日でまとめずに、間隔をあけて最低3回。印ごとに戻る周期を変え、解けたらひとつ上、解けなかったらひとつ下
そして、この記事でいちばん伝えたかったのは、○は剥がれるということです。参考書を読んだ直後についた○は、「覚えた」の証明ではありません。○にも期限を入れて、忘れたころに一度確認してください。
最後に、その「いつ」を自分の意志で管理しようとすると、たいてい続きません。私も続きませんでした。解いた日と印を記録に残して、次に解く1問は記録に決めてもらう。そこまで持っていけると、机に向かってから迷う時間がなくなります。
今日やることはひとつだけです。今日解いた問題の番号と、日付と、○△×を、どこでもいいので1行書き残してください。 それだけで、抜けていた「いつ」の軸が戻ってきます。
解き直す間隔を仕組みに任せる話も含めて、AIをどう使うと記憶に残るのかという全体像は「AIで暗記する方法」にまとめています。