「単語帳(Ankiデッキ)を作るのが大変で、肝心の勉強に時間が回らない…」という方へ。AIエージェントの Claude Code に Anki を操作させると、教材から暗記カードを半自動で作れます。私自身、資格勉強用のカード作成が1日がかりだったのが、体感30分ほどで下書きを用意できるようになりました。ただし本題は、仕組みよりも「AIに何を作らせ、何は作らせないか」という線引きにあります。昨今のAIのモデルがとても賢くなったとはいえ、AIに丸投げでは質が落ちるからです。なお以下は、私個人が自分のPCでやっている学習の自動化の話で、当ブログを運営する学習アプリ「えびデッキ」の機能の説明ではありません。
Claude Codeで単語帳は自律生成できる? 結論と全体像
先に結論を言うと、自動生成できます。ポイントは「AIに教材を渡し、カードの下書きを作らせて、自分で確認してから Anki に取り込む」という流れを組むことです。
まずは言葉の整理から始めましょう。Claude Code とは、ターミナル(黒い画面のコマンド入力欄)で動く、Anthropic 社のAIエージェント型のツールです。ふつうのチャットAI(ChatGPT等)と違い、指示すると自分でファイルを読んだり、パソコンの中で作業を進めたりできます。
もう一つ、AnkiConnect という部品を使います。これは、パソコン版の Anki に「外から操作するための窓口」を足すアドオン(追加機能)です。Anki に郵便受けを付けるようなもので、ここに向かってカードを投函すると、Anki の中にカードが追加されます。
自律生成のやり方は、土台となる仕組みと、その使い方に分けて考えると整理できます。土台は先ほどの AnkiConnect(Anki に付けた「郵便受け」)です。ここへカードを投函する経路が、大きく分けて次の3つです。
| どうやって Anki に入れるか | 具体 | 向いている人 |
|---|---|---|
| AnkiConnect を直接叩く | Claude Code に curl やスクリプトで操作させる | 仕組みを理解して自分で組みたい |
| AnkiConnect を MCPサーバ経由で叩く | 会話するだけで追加まで任せる(裏で AnkiConnect を叩いている) | コマンドを書きたくない |
| genanki(別ルート) | Anki を使わずファイル(.apkg)を作って取り込む | まとめて作りたい・配りたい |
上の2つ(直接/MCP経由)は入口が違うだけで、行き先は同じ AnkiConnect です。MCP とは、AIツールと外部アプリをつなぐ共通規格のこと。Anki 用の MCP サーバ(例: timKnds/anki-mcp など)を間に挟むと、コマンドをほとんど書かずに会話だけでカードを追加できます。genanki だけが AnkiConnect を使わない別ルートです。
「それなら会話だけで済む MCP が一番ラクそう」に見えるかもしれません。たしかにその手もあります。ただ、MCP サーバは AnkiConnect を裏で叩いているだけで、やっていること自体は同じです。しかも Anki 用の MCP サーバは有志が作ったものが多く、成熟度もまちまち。まず土台の AnkiConnect を分かっておけば、MCP を使うときも genanki に切り替えるときも応用が効きます。そこでこの記事では、土台の AnkiConnect を直接使う方法を軸に説明します。
イメージとしては、教材を渡すと下書きを作ってくれる「作問アシスタント」を、自分のパソコンに住まわせる感覚です。
ちなみに、当ブログのえびデッキには「間違えた問題からAIがカードを作り直す」仕組みを開発中ですが、この記事で扱うのはあくまで個人の環境での自動化です。既存の Anki 運用や過去問演習と組み合わせて使う前提で読んでください。
仕組み:Claude CodeとAnkiConnectでカードを自動で入れる
AnkiConnect を入れると、Anki の起動中に localhost:8765(127.0.0.1:8765 と同じ、自分の端末の中だけで通じる住所)でリクエストを待ち受けます。ここへ「こういうカードを追加して」というJSONを送ると、カードが増える仕組みです。外部には公開されず、自分のパソコンの中で完結するのが安心な点です。
まず、つながっているかの確認はこれだけです。
curl localhost:8765 -X POST -d '{"action":"version","version":6}'
カードを1枚足すときは、addNote というアクションに、デッキ名・カードの型・表裏の中身を渡します。
{
"action": "addNote",
"version": 6,
"params": {
"note": {
"deckName": "自分のデッキ",
"modelName": "基本",
"fields": { "表面": "HTTPSの既定ポートは?", "裏面": "443" },
"tags": ["ネットワーク"]
}
}
}
ここで deckName は入れ先のデッキ、fields が表と裏の中身、tags は分野の目印です。
Claude Code の役割は、この一連を自分でやってくれることです。「この範囲の教材からカードを作って Anki に入れて」と頼むと、原稿を作り、AnkiConnect 経由で投入するところまで進めます。先ほどの MCP サーバを噛ませれば、コマンドを意識せず会話だけで完結します。
ただし、いきなり本番投入はしません。まず試し実行(dry-run)で「何枚追加できて、何枚が重複でスキップされるか」を確認し、自分が納得してから投入するという順にしています。同じ原稿を再投入しても、すでにあるカードは重複として飛ばされる(冪等)ので、少しずつ足していけます。投入したあとパソコンで同期しておけば、スマホの Anki にも反映されます。
なお、ここで書いているのは AnkiConnect のような汎用の操作です。えびデッキ(製品)の内部の作り方の話ではありません。
教材のPDFをAIに読ませてカードにする
自分の教材がPDFや画像であれば、その中身をAIに読ませてカードにできます。最近のAIは画像を読み取る力がかなり上がっていて、スキャンしたPDFでも実用的に読めるようになりました。私も手元の教材のPDFを渡してカード化しましたが、思ったよりきれいに問題を作ってくれます。
手順はシンプルです。教材のPDFや画像を渡し、対象の範囲(章やページ)を指定して、「表を問い、裏を答えの形でカードにして」と頼みます。文字が潰れて読み取りにくいときだけ、解像度を上げて画像化してから読ませると通ります。
教科書に付箋を貼って「ここ、問題にして」と手渡す感覚に近いです。
一点だけ、著作権の注意があります。この記事で想定しているのは、自分で用意した教材・自分で作ったノート・許諾のある素材 をAIに読ませる範囲です。市販の書籍を電子化して使えるかどうかは、権利上の判断が読者側にあるため、本記事では扱いません。読ませる素材は、自分で作ったものや配布が許された範囲のものにとどめ、他人には配らないのを前提にしてください。
AIに何を作らせ、何は作らせないか(丸投げの限界)
ここがこの記事のいちばん伝えたいところです。AIにカード作りを任せると速いのですが、丸投げにすると質が落ちます。実際に使って感じた限界が3つあります。
1つ目は、教材に接地させないと「一般論」になることです。参考書やPDFを渡さないと、AIは自分の知識だけでカードを作ります。すると、手元の教材や試験の説明と少しズレた、一般的すぎる内容になりがちです。対策は単純で、自分の教材を渡して土台にすることです。
2つ目は、単語帳に向かない問題が混ざることです。たとえば私の場合は、計算が多い問題まで、そのままカードにされることがありました。暗記カードが得意なのは「何をどう計算するか」という手順や用語の想起です。計算そのものの練習は、過去問演習などで実際にノートを使って解くほうが向いています。もしノートを使う前提で計算問題のカードを作るなら、最低限デッキは分けたほうが良いです。ちなみに LaTeX を使えば、Anki でも複雑な数式をきれいに表示できます。私の場合は、カードにするのは暗記できる部分に絞り、演習は別に分ける、と決めています。
3つ目は、図や画像は苦手なことです。図を含むカードを一から作らせるのは、今もうまくいきません。基本は、表やコードなどテキストで表せる範囲に寄せるのが実用的です。
ただし、図については工夫の余地もあります。苦手なのは「AIに絵を一から描かせる」ことです。図を文字で書ける記法(mermaid など)やHTMLなどで書かせて画像化し、カードに貼る方法や、元の教材の図を切り出して貼る方法なら扱えます。ここは深く立ち入りませんが、やりようはある、とだけ覚えておくと選択肢が広がります。
まとめると、「AIに何を作らせ、何は作らせないか(=カードに向かないもの)」を自分で決めるのが、経験してみて分かったコツです。AIは万能ではなく、優秀な下書き係だと思って付き合うのがちょうどいい距離感です。何を下書きさせるかを決めるのは、あくまで自分です。
生成したカードの質を保つ工夫
下書きを作らせたあと、質を保つために自分で決めているルールがいくつかあります。
- 1枚に論点を1つにする(原子化)。長い列挙や記述式は作らせません。1つの論点が自然に割れるときだけ、2〜3枚に分けます。
- カードの型を使い分ける。丸ごと思い出したいものは表裏(QA)、要素をバラして覚えたいものは穴埋め(Cloze)にします。「どこを隠すと学習効果が高いか」で決めます。
- 解説はまず短く付ける。「直感(一言で何か)・なぜ・つまずき例」の3点だけ添えると、あとで見返したときに効きます。最初から全部を丁寧に書き込む必要はありません。理解が浅いところや、もっと深掘りしたいカードだけ、あとから AI にさらに詳しい解説を作ってもらう、というやり方にしています。
- 承認してから投入する。AIが案を出し、自分が確認してOKを出すまで、本番のカードには入れません。承認前は原稿ファイルにも書き込まない運用にしています。丸投げで自動投入にはしない、ということです。
最後に、AI生成でいちばん漏れやすい落とし穴を1つ。穴埋めカードは、出題面に答えがうっかり見えてしまうことがあります。たとえば、隠した言葉のすぐ後ろの括弧に正式名称が書いてあったり、別の一文に答えの単語がそのまま出ていたり。これは目視だと見落とすので、私は簡単なスクリプトで自動的に見つけて警告を出し、最後は自分の目で潰しています。AIに任せるほど、この手の機械的なチェックが効いてきます。
材料(AI生成)は速いけれど、盛り付け(絞り込みと承認)は自分でやると味が決まる、という感覚です。
なお、Anki を起動せずファイルとして作りたい場合は、genanki というライブラリでデッキファイル(.apkg)を生成し、あとから取り込む方法もあります。手元にすぐ足したいなら AnkiConnect、まとめて作りたいなら genanki、と用途で使い分けるとよいです(配布する場合は素材の権利にご注意を)。
よくある質問
プログラミングが分からなくても Claude Code で単語帳は作れますか?
この記事のやり方は、コマンドやツールの基本が分かる人向けです。プログラミングを触らずに、まずAIで暗記カードを作ってみたい場合は、ChatGPTなどに作らせる方法から始めるのがおすすめです。基本の作り方は別記事「暗記カードをAIで自動生成する方法」にまとめています。慣れてきたら、この記事のエージェントを使うやり方に進むと、作成がぐっと楽になります。
AIに丸投げすれば全部作ってもらえますか?
丸投げだと質が落ちます。教材を渡さないと一般論になり、計算問題など単語帳に向かないものまで混ざり、図は苦手です。自分の教材に接地させ、暗記に向く部分に絞り、最後に自分で確認する。この3つを挟むだけで、実用に耐えるカードになります。
生成したカードは Anki 以外でも使えますか?
.apkg ファイルや AnkiConnect は Anki を前提にした仕組みです。今のところは、自分でデッキを作り、忘れそうな頃に出し直してくれる間隔反復(FSRS など、回答履歴から次の復習日を決め直す仕組み)で復習する形になります。えびデッキでも自分の単語帳を扱えるようにする構想はありますが、こちらは開発中です。
まとめ
Claude Code に AnkiConnect を操作させれば、教材から単語帳(Ankiデッキ)を半自動で作れます。MCPサーバや genanki を使う道もあります。ただし本当のコツは仕組みではなく、「AIに何を作らせ、何は作らせないか」を自分で決めることです。教材に接地させ、暗記に向く部分に絞り、承認を挟む。この設計が、カードの質を決めます。
もっと手前から始めたい方は、ノーコードで試せる「暗記カードをAIで自動生成する方法」を先に読むと、全体像がつかめます。そもそものデッキの作り方を固めたい方は「Ankiデッキの作り方」もあわせてどうぞ。Claude Code を暗記・学習にどう活かすか、全体像から知りたい方は「Claude Codeで暗記・学習を効率化する使い方」が入口になります。作ったカードは、過去問演習や既存の勉強法と組み合わせて使うのがおすすめです。
単語帳の生成そのものを自動化するこのやり方も含めて、AIをどう使うと記憶に残るのかという全体像はAIで暗記する方法にまとめています。